冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「そうですな……ラケルとこれからも仲良くしてやってください。あやつは……人が好きで、自分の魔法を突き詰めることではなく、誰かのために力を尽くすことを望んだ。私は師として……違う道を進んだあやつに教えてやれることもう多くなく、苦しみも分かってやれない。しかし、あなたたちが導いてくれるならば、きっと正しき道を進んで行けるでしょう」
「……はい」

 目の前の人に苦しむラケルの現状を伝えられたらどれだけいいだろうか。だがおそらくラケル自身はそれを望むまい……そんな事を思うと、セシリーはどうしてもあの出来事を口には出せず、せめて心配を掛けるまいと作り笑顔を浮かべた。

 その後オーランドはジェニー夫人と共に去ってゆき、セシリーはリュアンに頭を軽く小突かれる。

「いたっ」
「おい、その変な笑顔やめろって言っただろ。不自然なんだよ……ラケルと何かあったのか?」
「……なんでもないです」

 これは自分とラケルの間だけでしっかり話し合って決着をつけなければいけないことだから……と、セシリーは首を振り、天井を見上げて深く空気を吸い込んだ。
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