冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「願っても無いお話ですな! 実は娘もあんなことを言っておりますが、リュアン殿にはとても感謝しておりまして……ぜひ何かお礼をしたいと息巻いておったのですよ!」
「きゃあぁぁお父様の馬鹿、ち、違うから! そんなんじゃないっ……もう黙ってよ!」

 悲鳴をあげたセシリーがオーギュストの口を左右に引っ張るが、彼はものともせずに底意地悪く笑うと(のたま)う。

「セシリー、これは家長としての命令だ! お前はしばらく魔法騎士団の方で雑用でも何でもさせていただきお世話になりなさい! どうせマイルズ君に振られた後家に閉じこもっているだけで、特に予定も無かったんだろう?」
「勝手に決めないでよ! 私、絶対に行かないから――っ!」

 一方、セシリーが思いの丈をぶちまけた隣で、リュアンの方もキースに食って掛かっている。

「――おい馬鹿眼鏡ッ! お前のせいで面倒臭いことになってきただろうが……どうしてくれる!」
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