元彼専務の十年愛
颯太が少し上体を離し、そのまま唇が重なった。
いったん唇が離れ、互いに目を合わせたあとに再び重なる。
気づけば夢中でキスを繰り返していた。
その情熱は途切れるどころかどんどん膨らんでいき、そのままベッドへと移動した。

真っ暗な部屋が、ベッドサイドのスイッチで光を生み出す。
眩しくて数瞬視界が暗くなり、徐々に私を見下ろす颯太の顔が映し出された。
あの頃よりシャープになった顎のライン。凛々しさが足された目元。
余裕のない表情の颯太は官能的で、身体の奥が疼いた。
何度も角度を変えて繰り返されるキスは深く荒々しいものに変わり、貪るように私を求める。
息継ぎもうまくできないまま、それに応えたくて必死に舌を絡ませた。
ゆっくりと唇が離れ、生温かい吐息が混じり合う。

「少しでも迷いがあるなら今言って。そうじゃないなら…」

うっすらと目を開くと、獰猛さを必死に抑える颯太の表情が映った。

「もう、止められない」

やさしい彼が私にくれた最後の猶予。
それが逆に、私の心の奥にある微かな怖さを全て拭い去った。
10年前に別れた時のように、ずたずたに傷つくかもしれない。
心が空っぽになってしまうかもしれない。
それでも、今この瞬間の温もりを手放したら後悔する。
涙が一筋零れ、彼の腕をギュッと掴んだ。

「止めないで…」


——"これが心に大きな傷を残し、その痛みが一生私を支配し続けてもいい。そう思うほどに、彼を求める気持ちを止められなかった。"

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