元彼専務の十年愛
午後一番に引越し業者がくることになっているため、昨夜手をつけていなかった荷物の整理をした。
本棚の本を片付けながら、一冊の小説に目をとめる。
ここにいる間に読み終えた『The everlasting love』。
読んだことを後悔した。
この物語は、最後に主人公と令息が結ばれることはない。
主人公は令息の元を去り、公爵となった彼は別の女性と結婚する。
主人公は家を出てなんとかひとり暮らしながら、生涯彼のことを想い続ける。
自分と重なる部分が多いこの小説を、二度と読むことはできないだろう。
そう思いながらも捨てる気にはなれず、ダンボールに詰めようとして、ふと頭の中にあるシーンが浮かんだ。
ペラペラと中身をめくり、そのページを開く。
読み返せば、まさに今の私の気持ちを表す言葉が書いてある。
再び止まらなくなった涙を懸命に拭った。

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