□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

「中止になったのか。もったいないな。面白そうなイベントだったのに」

「場所とか時期とか調整して、また開催できたらいいのにね」

「……で、なんで美咲が仕事の手伝いしてるんだ?」

「ええと、昨日会社帰りにドラッグストアに寄ったら偶然美咲さんに会って、その時編集長からイベント中止の電話が来て、勢いで美咲さんに一緒に編集部に来ます?って聞いたらついてきてくれたから、そのまま仕事手伝ってもらって……」

「それで気が付いたら朝まで仕事してたって?」

「その通りです」と私が頷くと、片桐は呆れたように苦笑した。

「編集長に話して、美咲さんにはちゃんと手伝ってもらった分、バイト代出すから!」

「いや、そうじゃなくて。よく美咲が素直に朝まで仕事手伝ったなと思って」

「人使いが荒いとか散々文句言ってたけど、仕事は真剣にやってくれたよ」

「お前は仕事になるといつも周りを巻き込んで暴走するから、つられたんだろうな」

背の高い片桐が私の事を見下ろしてくすりと笑う。
その表情が悔しいくらい魅力的に見えて、慌てて顔をそらした。

「すいませんね、いつも暴走して周りに迷惑かけて」
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