□TRIFLE□編集者は恋をする□
 
中野さんは、いつも雑誌の印刷でお世話になっている印刷会社の営業さんだ。
この時期に中野さんが編集部に来るなんて珍しいな、と思いつつ頭を下げる。

「営業の新人が入ったのでご挨拶に来たんです」

中野さんは彼の隣で同じようにスーツを着た二十代前半のまだ初々しい雰囲気の男の人を紹介してくれた。

「はじめまして、北日本印刷の大下です」

「あ、ありがとうございます。TRIFLE編集部の平井です」

丁寧に差し出された名刺を両手で受け取り、私も『月刊TRIFLE編集部 平井由依』と印刷された自分の名刺を取り出す。

「あー、噂の平井さんですか!なんだ、話よりずっと可愛いじゃないですかぁ!」

大下さんは名刺に書かれた名前と私の顔を交互に見比べて、嬉しそうに笑った。

若いなー、新卒だとしたら5歳は年下になるのか……。

彼の無邪気な様子に、思わず自分との年齢の差を計算してしまう。
今時のちょっと長めの髪に、まだ着慣れてなさそうな、でも清潔感のあるスーツ姿の彼。

……って。
今、『噂の平井さん』って言った?
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