□TRIFLE□編集者は恋をする□
「ずっと自分のものにしたくて、でも我慢してた女が、最近入って来たばっかの軽い男に口説かれてフラフラしてんの見たら、黙ってられないだろ」
私の事を見て自嘲するように笑った片桐が、色っぽくてドキドキした。
こちらを見る黒い瞳のその奥の熱さに、体の中心がとろりと溶けだしそうになる。
「美咲との関係が微妙なまま、お前に手を出して悪かった」
「あ、遊びじゃなかったの……?私はただの浮気相手じゃなかったの……?」
「遊びで同じ職場の、しかもお前みたいな分かりやすい女に手を出すわけないだろ」
「なにその言い方、むかつく……!」
そんな憎まれ口を叩く意地悪な男を睨んだ。
「片桐何も言ってくれないから、私は完璧にフラれたと思ってた」
「悪かった。自分の気持ちを言葉にするの、苦手なんだよ」
「片桐が無口で無愛想なのは知ってるけど、それにしたってひどいよ」
「そうだな。こんなんじゃ、お前の事を不器用だなんて笑えないよな。でも、美咲がいるのにお前への気持ちを堪えきれなくて、勝手な事をしてる自分が情けなくて、何も言えなかった」