そして消えゆく君の声
 最終の時刻にはまだ数分の余裕があったのだけど、滅多に人の通らない夜道だ。誰も乗らないと判断して、早めに発車してしまったのだろう。


(あと三分……ううん、二分早く着いていれば)


 黒崎くんに背に負ぶさるよう言われた私が全力で嫌がったりしなければ、無事バスに乗り込めていたはず。

 可愛いからって無理に慣れないサンダルを履いて。靴擦れなんて起こしちゃって。


(もう、もう申し訳なくて二人の顔を見られない……っ!!)


 ここに布団があれば頭までかぶってわあわあ喚いただろうけど、残念ながら目の前に続いているのは真っ暗な道だけで。

 はあ、とため息をつくと車道側を歩く黒崎くんが肩をすくめた。


「そもそも謝っても状況は変わらないんだから、足の心配だけしてろ」

「無理しないでいいからね」


 ぶっきらぼうな気遣いと、優しい笑顔が心にしみる。 

 ごめん、大丈夫。
 そう言いたいのだけど実際足の痛みはどんどんひどくなっていて、少しずつ歩くにしてもそろそろ限界が……。

(ダ、ダメ! がんばれっ私!!)
 
 
< 131 / 401 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop