そして消えゆく君の声
(そういえば、さっきからやたら子供連れの人を見かけるような)


 ひょっとしてと爪先立ちで身を乗り出すと、綿菓子がつまった長細い袋が縦横いっぱいに飾られているのが見えた。


「やっぱり」


 鼻をかすめるベビーカステラの甘い匂い。


「お祭りやってるんだ」


 自然、足が前へと進んだ。

 青空を背負った並木道。その向こうには神社があるみたいで、大きな石畳をはさむように露店の列が伸びている。

 りんご飴。
 焼きそば。
 金魚すくい。
 お面に射的。

 おなじみの店を、子供から大人まで大勢の人が楽しそうに見て回っている。


「すごい、向こうまでずっと続いてるよ」

「道理でうるさいと思った」

「でも、こういう賑やかさっていいよね」


 お祭りや縁日の雰囲気って、いくつになっても心が弾んでしまう。

 童心にかえるなんて言ったら、雪乃あたりに「まだ子供のくせに」と笑われそうだけど、普段見たり食べたりしても何とも思わないものが、すごく特別に見えて。

 足の痛みも忘れてはしゃぐ私に、幸記くんが小首をかしげる。
 
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