そして消えゆく君の声
「あ」


 ガラス扉の前に立つ、背の高い後ろ姿が見えた時。これは運命なんじゃないかとさえ思った。


 ちいさな頭。

 あまり姿勢のよくない背中。

 いつも、どこか寂しげに見える後ろ姿。


 誰かなんて顔を見なくてもわかる。
 だって、ずっと見てきたから。


「黒崎くん」


 かけ足で近付いた私と、こちらを振り返った途端、顔いっぱいに広がった気まずげな表情。

 ああ、やっぱりと思った。

 やっぱり避けていたんだ、私を。



「傘、ないの?」 



 薄い鞄を持った手元を見ながらたずねると、一瞬、黒い瞳が外へと向けられて。

 ひょっとしてまた濡れて帰る気だろうかとあせったけれど、雨脚の強さにあきらめたのか、渋々といった表情で私に向き直った。


「………盗まれた」

「え、あ、傘?」

「……」


 無言でうなずいて、すぐに視線を逸らす。そのまま顔までそむけるのだから、ストレートにもほどがあるというか。
 
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