そして消えゆく君の声
「えっと、も、もうすぐ……文化祭だね」

「…………」

「私の友達が手芸部なんだけど、手芸部って三年生はドレス作ることになってて。あ、ドレスってウェディングドレスね。それで、この前ちょっと見せてもらったんだけど、すごく綺麗で……すごいよね、ああいうの――」

「興味ない」


 …………そうだよね。
 ここでウェディングドレスの話はないよね。


 にべもない言葉に下を向く私。

 そもそも、黒崎くんが文化祭に関心があるとは思えない。学校行事なんてほとんど参加しないのに。

 それに、私がしたいのはそんな話じゃないはずだ。機嫌をうかがうための前置きなんていらない。


 だから
 息を吸い込んで、もう一度口を開く。


「幸記くん、元気?」


 黒い目が、初めてこちらを見た。
 カクン、とかたむく傘と、雨水の跳ねる音。


「……それなりに」

「そっか、良かった」

「……」

「八月からずっと会えてないから、心配で。電話で話した時は普通だったんだけど」


 それなり、がどれくらいの範囲を示すのかはわからないけど、前より酷い状況にはなってはいないようで安心する。
 
< 205 / 401 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop