私が本物の令嬢です!

「本当に懐かしいですわ。公爵さまはあの頃も素敵でしたけど、今はもっと素敵な殿方になられましたね」
「ははっ……そう言っていただけて嬉しいです」

 マギーの言葉に照れくさそうに笑うセオドア。
 フローラは複雑な気持ちで聞いている。


「あの頃のことをよく覚えていらっしゃるんですね」
「当たり前ですわ。私たち、花を摘んで遊びましたわよね」
「え? そう、でしたか……」

 言葉に詰まるセオドアの様子を見て、マギーは焦る。


「すみません。私ったら、勘違いを……」
「いいえ。もうずいぶん昔のことですから」

 セオドアは微笑んで返す。
 マギ―は安堵したように笑った。

 フローラは表情に出さず、胸中で笑った。


 バカね、マギー。
 あなたは知らなくて当然だわ。
 私たちは木登りをして遊んだのよ。


 フローラはセオドアに目をやる。
 すると、セオドアがその視線に気づいてこちらを向いた。
 緋色の瞳をまっすぐ向けられて、フローラはとっさに目をそらした。


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