私が本物の令嬢です!

 いけない。
 これ以上、彼を見ていたら真実を話したくなってしまう。
 だけど、フローラだと名乗れない以上、どうすることもできない。

  
 フローラは黙って各々の席に料理を運んだ。
 マギーに料理を出そうとしたとき、突然彼女に足を引っかけられた。

「あっ……」

 前のめりになり、転びそうになったが、何とか堪えた。
 だが、料理からソースがこぼれ、マギーのドレスにかかった。


「まあ、ドレスが汚れてしまったわ」

 マギーの声に、一同ざわつく。


「そのドレスはこの日のために用意した高価なものなのよ!」
 とマギーの母がわざとらしく声を上げた。


「この大切な日に、なんという無礼な! お前、皆さまに謝罪しろ!」

 激怒した伯爵に、フローラは深々と頭を下げる。


「も、申しわけ……ありませ……」
「いいわ、許してあげる。ドレスなんてまた買えばいいわよ。失敗は誰にでもあるわ。あなたも気にしないで」

 満面の笑みでそんなことを言うマギーに対し、フローラはぞっとした。


< 11 / 97 >

この作品をシェア

pagetop