私が本物の令嬢です!

 お菓子を食べながら、お互いに自己紹介をした。
 フローラはこの家のひとり娘であること、セオドアは公爵家の長男であること。
 そして、ふたりはお互いの趣味や好きなものについて語った。
 フローラは大好きな書物について話すと、セオドアも興味を持った。


「うちには大きな書庫があるんだ。今度うちへ遊びにおいでよ」
「ほんと? 嬉しいわ」
「君はどんな本が好きなの?」
「何でも好きよ。何でも読むもの。だけど、一番心に残っている本があるわ。そこに書いてある言葉がとても印象的なの」
「どんな言葉?」
「それはね……」





 昔の記憶を辿っていたとき、ふいにガサッと音がして、フローラは振り向いた。
 その視線の先には大人びたセオドアの姿あった。
 幼い頃の面影を残したまま、背丈はすらりと高く伸び、可愛らしい表情は凛々しくなっている。

 セオドア……。
 そう名前を呼ぼうとしたが、声が出なかった。

 彼の名前さえも、口にすることができないのだろうか。


 フローラはぺこりとお辞儀をして、この場から立ち去ろうとした。
 しかし、いきなりセオドアに腕をつかまれた。


「大丈夫ですか? あなた、泣いている」
「えっ……」

 振り返った瞬間、セオドアの顔がすぐそばにあった。
 フローラは耐えきれず、涙をぼろぼろと流した。


< 14 / 97 >

この作品をシェア

pagetop