私が本物の令嬢です!
翌日、セオドアは従弟で友人でもある魔法師グレンの屋敷を訪れた。
グレンは王国でも凄腕の魔法師である。
王族の家系である公爵の父と魔女の母との子であり、爵位を継いだ兄とは違って我が道を生きている。
「あははははっ! とうとうお前も真実の愛を見つけたのか」
悩んだあげく友人に話したら、笑われてしまった。
硬い木の椅子に腰を下ろして俯いていたセオドアは、苛立ちのあまりグレンを見上げて睨んだ。
黒髪黒ずくめの陰気くさい男だが、性格は明るいグレン。
彼は窓際に立って苦笑しながら幼馴染を見下ろした。
「うるさい。真剣に悩んでいるんだ」
「ああ、悪い。しかし、一体どうしたんだ? 何があった? あんなにナスカ令嬢に惚れ込んでいたと言うのに」
セオドアは再び俯いてため息をつく。
「本当に美しい女性なんだ。ひとめ見て惹きこまれてしまった。まるで、10年前にフローラと出会った頃のような感覚だった」