私が本物の令嬢です!

「ふうん。つまり、お前は出会った女に一目惚れしやすいということか」
「違う! 今までそんなことはなかった。フローラと初めて出会ったときと今回だけなんだ。同じような感覚だった。ああ、どう説明したらいいんだ」


 頭を抱えて苦悩するセオドアを、グレンは無言で見つめる。
 その表情は、真顔だ。


「で、肝心なナスカ令嬢に対してはどう感じたんだ?」

 グレンの質問に対し、セオドアは驚いたようにびくっと震えた。
 そして、震え声で言う。


「何も、感じなかった……」
「そうか。本当に、ナスカ令嬢には何も感じなかったんだな?」
「……そうだ。懐かしいという思いも、高揚感も、何もなかった。本当に、俺は最低な男だ」

 再びセオドアがうなだれると、しばらく無言が続いた。
 グレンが冷静に訊ねる。


「まあ、待てよ。お前が薄情だと決めつけるにはまだ早い」
「どういうことだ?」

 セオドアが驚いて顔を上げると、グレンはにやりと笑った。



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