私が本物の令嬢です!

「今日はこれでも食べなさい。つまみ食いなんかしたら旦那さまに鞭打ちしてもらうわよ」

 伯爵の鞭打ちは酷いものだ。
 フローラは何度か彼の怒りを買って背中や足首を打たれたことがある。
 そして、鞭打ちのあとは3日間も冷たい地下室に閉じ込められるのだ。
 そのとき与えられるものはコップ一杯の水だけだった。


「そ、それだけは……どうか」

 今の体力では耐えられない。
 死んでしまうかもしれない。

 フローラはまだ心の中では諦められなかった。

 セオドアに会いたい。
 彼に名乗りたい。

 あなたの本当の婚約者は私よ。

 そんな淡い期待を抱いているからこそ、フローラはまだこの状況に耐えられる。


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