私が本物の令嬢です!

6、このままでは死んでも死にきれない


 このところ、体調が悪い。
 フローラが使用人扱いをされてから数年は経つ。
 食事も質素になり、働きづめで睡眠もろくに取れない日々が続いたせいかもしれない。

 それでも、この不調はあのときを境に極めて悪化している。
 得体の知れない呪術師に、自分の名前や身分など大切なことを口に出せなくなるという呪いをかけられた日からだ。

 無気力な日々が続き、体力まで奪われていく。
 仕事も遅くなり、先輩使用人から怒られることが多くなった。


「まったく、役に立たないったら。今日の食事は抜きよ」
「そんな……昨日も硬いパンがひとつだけでした。どうか、それだけは……」
「ろくに働きもしないで生意気なこと言うんじゃないわよ! あんたなんか追い出されて当然の身なのよ。あたしが旦那さまに頼み込んであんたを置いてあげてるんだからね」

 先輩使用人はカビの生えたパンの欠片をフローラの頭に投げつけた。
 パンは割れて小さな屑が床に散らばる。


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