私が本物の令嬢です!
困惑しながらも胸中では目の前の偽物にはらわたが煮えくり返るほど苛立っていたのだ。
しかし、ここは冷静に対応する。
「令嬢、僕は伯爵と打ち合わせがありますから、少し部屋でお待ちしていてください」
「ええ? そんな! フローラ、早く公爵さまとふたりきりになりたいのに! ねえ、お父さまぁ!」
伯爵も複雑な表情をしている。
「フローラ、彼と話があるんだ。そのあとでなら、存分にふたりの時間が持てるぞ。さあ、あちらで話を」
伯爵に促されて、セオドアはマギーの顔を見ることもなく立ち去った。
そして2時間が経過した頃。
セオドアはようやく解放され、外の風に当たろうと伯爵家の庭へ出るところだった。
ダイニングルームのそばを通りかかったときのこと。
室内から大きな声が響いてきて、セオドアは思わず足を止めた。
マギーが誰かを罵っている声だと思い、うんざりした気分になった。