私が本物の令嬢です!

8、偽婚約者との一日【セオドア視点】


 パーティの数日前。
 セオドアはナスカ伯爵家を訪れていた。
 彼は不快感を表に出さないよう、常に冷静に笑顔で接した。


「公爵さま! お会いしたかったですわ。少し離れていただけで、気が狂いそうなくらいあなたのことを想っていましたのよ」

 偽物令嬢マギーが必死の形相で迫ってくる。
 セオドアは一歩引いて、苦笑しながら返す。


「そうですか。僕もお会いしたかったです」
「そうでしょう。あたしたち、もうすぐ正式に婚姻相手としてお披露目されるのね。嬉しいですわ。ああ、早くあなたと暮らしたいわ。片時も離れたくないのですわよ」
「落ち着いてください、令嬢。結婚すれば毎日一緒にいられます。ご準備もおありでしょうから、そう焦らずとも」
「公爵さまはこのフローラと一日も早く一緒になりたいというお気持ちではございませんの?」
「いいえ、そういうことでは……」
「フローラは早く公爵さまと一緒になりたいの。婚約披露どころか、すぐにでも結婚式をしたいくらいですわ」

 セオドアは乾いた笑いをするばかりで、言葉に詰まった。



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