私が本物の令嬢です!
「マギーはどこ? 昼食に使うじゃがいもに皮がついていたわ。きちんと剥いていなかったのよ。お仕置きをしなきゃいけないわね」
最近の異様なくらいのフローラに執着する先輩使用人に対し、周囲は怪訝に思っていた。
そもそもフローラは昨夜、一晩で裁縫を仕上げるように言われ、徹夜していたのだ。
「いくら何でも八つ当たりが過ぎないかしら?」
と周囲がひそひそ言う仲、ひとりの使用人が陰からこっそりと言った。
「マギーなら外の水路でさぼっていましたわ」
先輩使用人は怒りに満ちた形相ですぐさま水路へ向かった。
高い柵に沿って薔薇の花が植えられ、屋敷が覆われている。庭の手入れが行き届いていないせいか、雑草が生え伸びている。その柵の外側に水路がある。
屋敷の背後には森があり、人通りの少ない場所である。
フローラはフードを被ってそこにいた。
先輩使用人はにやりと笑うと、フローラを背後から突き飛ばし、水路に落下させた。