推し作家様、連載中につき。
「……」


 無言。どこまでも無言だった。

 さすがに何の反応もないから、見せたらマズい紙だったのかも、と急に不安になってくる。


 ちらっと横目で水谷くんを見てみると、彼は案の定、その紙を凝視しては固まっていた。


「……なに、書いてあるの?」

「……」


 きいても、全然答えてくれない。

 ええい、もう仕方がない。
 顔を見せて、紙を返してもらうしか────。


「……っ」


 私はてっきり、水谷くんの視線は私を向いているものだと思っていた。

 彼はしつこいくらいなぜか私に執着していたし、今だって、視線を合わせるための演技なのかなって。


 だけど、違った。


 まっすぐ、揺らがず、目を大きく見開いてずっと紙を見続けている。

 水谷くんの目線は、右に左にと紙をなぞるようにすべっていく。


「……みずたに、くん?」


 あなたは、いったい何を見ているの。

 そんなに驚くようなことが、そこには書いてあるの?



 緊張で汗が流れる。ごくりと唾を飲んだ。

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