怖い話しようよ
真っ白なシンプルなワンピースを着た女性は、山道を歩くには不向きなヒールの高い靴を履いており、白い帽子を被っている。そして、申し訳なさそうな顔で頭を何度もペコペコと下げていた。

「えっ、こんな時間に何で人が……」

莉子は驚きながら時計を見る。時刻は夜中の二時を過ぎた頃だ。女性が一人で、それも車ではなく徒歩でこんな険しい山道を歩いているなど、あり得ない。

「何かあったのかもしれない」

光彦はそう言い、車を降りた。女性がすぐに駆け寄ってくる。

「飛び出してしまってすみません。あの、よければ私を町まで乗せて行ってくれませんか?私、彼氏とここに来てたんですけど、口論になって……」

車は彼氏が運転していたらしく、身一つで追い出されてしまったらしい。こんな山道を一人で歩くなど、あまりにも危険すぎる。

「乗せてあげよう」

真一がそう言うと、理子と学も頷く。光彦も賛成だ。女性を一人放っておくことなどできない。
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