契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
炊飯器には、楓によそった分の一点五倍ほどの白米が残っている。
弟の透ならこのくらいは全部食べられそうだ。

「残り全部入れちゃっても大丈夫ですか? カレーも全部かければちょうどいいくらいです」
 
和樹が炊飯器とカレー鍋に視線を送りためらいながら問いかける。

「……だが、俺が全部食べてもいいのか?」

「大丈夫です。むしろありがたいです。ひとり暮らしだと、こういう料理は余っちゃって」
 
二日続けて食べるか、そういう気分でない時は冷凍だ。
安心させるように楓が言うと、彼は納得して頷いた。

「じゃあ、頼む」
 
自分が作ったカレーを、和樹が食べてくれる。
 
そのことがなんだかとても嬉しかった。張り切ってご飯をよそい、カレー鍋のお玉を持って手を出す彼に渡す。

と、そこであることに気がついて、冷蔵庫から福神漬けの袋を出して彼に見せた。

「でも、福神漬けは半分半分でお願いしますね」
 
念のための確認だ。赤くて甘い福神漬けは楓の大好物。このために、カレーを作ったといっても過言ではないのだ。

カレーをたくさん食べてもらえるのは嬉しいけれど、福神漬けに関してはそうは思えなかった。
 
カレーを皿に入れ終えて鍋を流しに置き水を流してから、和樹が振り返った。

「いや、それはおかしいだろう。福神漬けは、カレーの量に比例して分けるべきだ」
 
思いがけない彼からの拒否の言葉に、楓は反論する。

「なっ……! それはダメです。私、福神漬けが大好きなんです。福神漬けがたくさんないとカレーを食べた気がしないくらいなんです」
 
自分にとっていかに福神漬けが大切かを主張する。
 
ところが彼の方も一歩も引かなかった。

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