契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
ロイヤルスイートルームの静かなリビングで楓は東京の夜景を眺めている。

ひんやりとした窓ガラスに手をついてため息をついた。
 
パーティはつづがなく終了した。ゲストのうち半分ほどは下船し、遠方から招待した残りの半数は、クイーンクローバー号に宿泊する。

すべてのゲストを見送って、楓と和樹がこの部屋へ戻ってこれたのは十一時を過ぎてからだった。

先に楓がバスルームを使わせてもらい。今は和樹が、シャワーを浴びている。
 
パーティの間中、パジャマに着替えてひとりになり、ようやく今日一日張り詰めていた緊張が解けた。

同時に、無理やり考えないようにしていた黒柳の話が、頭をぐるぐると回りはじめている。
 
和樹と楓は、夫婦としては釣り合わない。
 
彼が、女性と会っているかもしれない。
 
——だとしても自分に傷つく権利はない。
 
だけど、傷つかずにするためにはどうすればいいんだろう?
 
さっきからそのことについて思いを巡らせている。
 
彼を好きだという気持ちは止められないというのに……。

「楓」
 
名を呼ばれて振り返ると和樹がバスルームから出てきていた。

パジャマを身につけている楓とは違い彼は部屋着姿だった。

この後、船内に人影が減ったのを見計らって別の部屋へ移動するという。

「疲れた?」
 
楓の隣に並び、彼は優しく問いかける。

「少し……。でも大丈夫です」
 
答えると、彼は安心したように頷いた。

「今日はよくやってくれた。想像以上だったよ。ありがとう」
 
真っ直ぐな視線と褒め言葉に、楓の胸は熱くなる。
 
やり遂げたのだ。彼の期待に応えることができた。

それだけで十分だと一生懸命自分自身に言い聞かせた。

「よかったです。ホッとしました」
 
本心からそう言うと、彼の手がゆっくりと伸びてきてそっと楓の頬に触れた。
 
たった指先三本分。
 
でもその感覚に楓の胸は高鳴った。煌びやかな東京の夜景を背にした彼の瞳が綺麗だった。

頬に触れる温もりと自分を見つめる彼の視線。まるで目の前のものを慈しむかのように……。
 
< 137 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop