契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
どうして彼はそんな目で、自分を見るのだろう?
 
まるで楓が離れることを、嫌がっているかのように。

わからない。わからないけれど……。

「楓……」
 
彼の声音が少し震える。

「和樹さ……」

 
言いかける唇は……。

「ん……」
 
そのまま熱く塞がれる。
 
はじめての感覚に無意識に開きかけた唇に、和樹がすかさず侵入する。

「んんっ……!」
 
はじめての衝撃に耐えられず、背中はしなり膝が折れる。

けれど楓を包む和樹の両腕はびくともしなかった。力強く楓を抱いたまま、彼は楓の中で暴れ回る。

いったいなにが起きたのか、まだよくわからないままに身体が反応しはじめる。

知らなかった。
 
愛する人との触れ合いが、こんなにも甘美なものだなんて。
 
痺れるような感覚がまともな思考を奪いさり、ただ彼に触れていたいという思いに支配される。

もっと長くもっと深いところまで来てほしい。
 
楓の中の知らなかった感情が目を覚まし主張しはじめる。

彼のTシャツを握り締めて、次第に楓も与えられる感覚に無我夢中になっていく。

「楓……」
 
自分の名を呼ばれて目を開くと、大きなソファに寝かされていた。

「……楓」
 
せつなげに自分を呼ぶ、彼の視線が降りてくる。
 
楓は再び目を閉じる。

「ん……」
 
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