契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「女性ほどではないかも知れないが、男もある年齢になると周りがうるさくなるものだ。現に俺もそろそろ耐えられなくなってきた」
「え? あなたみたいな方もですか?」
半信半疑で楓は尋ねる。頭のてっぺんから爪の先まで完璧に見えるこの紳士が、独身だということが意外だった。
でもそれが本当なら、周りは放ってはおかないだろう。やいやいうるさく言うはずだ。
男性が肩をすくめた。
「ああ。だからその夫代行サービスには興味をそそられたよ。確かにいいサービスだ。だったら、俺と君が結婚すればいいと思わないか? 見事に利害が一致する」
真面目な顔をして冗談を言う男性に、楓はぷっと噴き出した。
「それいいかも……! ふふふ、あなたみたいなちゃんとした方なら、うちの両親も黙るだろうな。お願いしちゃおうかな」
彼の冗談に乗っかってそんなことを言いながら楓はカクテルを飲む。
さっきのむしゃくしゃした気持ちが嘘みたいに、いい気分だった。
美味しいカクテルとオードブル、愚痴を聞いてもらったことで気が晴れたのだろう。聞き上手な通りすがりの紳士に感謝だ。
「ぜひお願いしたいです」
「じゃあ決まりだな」
彼のジョークに楓が笑ったことに満足したのだろう。
男性が嬉しそうに微笑んだ。そしてなにかに気がついたようにスーツの胸ポケットに手を入れる。
携帯が振動したようだ。画面を確認してからグラスを置いて立ち上がった。
「時間だ。私はそろそろ行かなくてはならない。君は?」
「もう少し飲んでから帰ります」
カクテルも、オードブルもまだ半分ほど残っている。
さっきのようにやけになって飲み明かそうという気分ではもはやない。ただ、ちゃんと楽しんで帰りたかった。
「飲み過ぎには注意だよ」
「はい。話を聞いてくださってありがとうございました」
はっきりと答えると男性が納得したように頷いて「じゃあまた」と告げ会計を済ませて出ていった。どうやら楓の分の支払いも済ませていってくれたようだ。最後までスマートな人だった。
BARでたまたま一緒になったという特殊な状況でなければ、普段の楓ならかかわることのないタイプの男性だ。
見た目が素敵なだけでなく、着ているものや振る舞いも、どこか別の世界の人のようだった。
なんにせよ、彼のお陰で少し気分が晴れたのだ。しかもその上、ご馳走までしてもらったのだから、ありがい、ラッキーな出来事だ。
さっきまでは、今年はきっと最悪の一年になるだろうなんて思っていたが、案外そうでもないのかもしれない。
そんなことを考えて楓はクラッカーをかじった。
「え? あなたみたいな方もですか?」
半信半疑で楓は尋ねる。頭のてっぺんから爪の先まで完璧に見えるこの紳士が、独身だということが意外だった。
でもそれが本当なら、周りは放ってはおかないだろう。やいやいうるさく言うはずだ。
男性が肩をすくめた。
「ああ。だからその夫代行サービスには興味をそそられたよ。確かにいいサービスだ。だったら、俺と君が結婚すればいいと思わないか? 見事に利害が一致する」
真面目な顔をして冗談を言う男性に、楓はぷっと噴き出した。
「それいいかも……! ふふふ、あなたみたいなちゃんとした方なら、うちの両親も黙るだろうな。お願いしちゃおうかな」
彼の冗談に乗っかってそんなことを言いながら楓はカクテルを飲む。
さっきのむしゃくしゃした気持ちが嘘みたいに、いい気分だった。
美味しいカクテルとオードブル、愚痴を聞いてもらったことで気が晴れたのだろう。聞き上手な通りすがりの紳士に感謝だ。
「ぜひお願いしたいです」
「じゃあ決まりだな」
彼のジョークに楓が笑ったことに満足したのだろう。
男性が嬉しそうに微笑んだ。そしてなにかに気がついたようにスーツの胸ポケットに手を入れる。
携帯が振動したようだ。画面を確認してからグラスを置いて立ち上がった。
「時間だ。私はそろそろ行かなくてはならない。君は?」
「もう少し飲んでから帰ります」
カクテルも、オードブルもまだ半分ほど残っている。
さっきのようにやけになって飲み明かそうという気分ではもはやない。ただ、ちゃんと楽しんで帰りたかった。
「飲み過ぎには注意だよ」
「はい。話を聞いてくださってありがとうございました」
はっきりと答えると男性が納得したように頷いて「じゃあまた」と告げ会計を済ませて出ていった。どうやら楓の分の支払いも済ませていってくれたようだ。最後までスマートな人だった。
BARでたまたま一緒になったという特殊な状況でなければ、普段の楓ならかかわることのないタイプの男性だ。
見た目が素敵なだけでなく、着ているものや振る舞いも、どこか別の世界の人のようだった。
なんにせよ、彼のお陰で少し気分が晴れたのだ。しかもその上、ご馳走までしてもらったのだから、ありがい、ラッキーな出来事だ。
さっきまでは、今年はきっと最悪の一年になるだろうなんて思っていたが、案外そうでもないのかもしれない。
そんなことを考えて楓はクラッカーをかじった。