契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
夕暮れの街を、手を繋ぎ幸せそうな恋人たちが歩いていく。
通りに面したオープンカフェのテラス席で楓は、それをぼんやりと眺めている。
意味もなくアイスコーヒーをかき混ぜると、カランカランと氷が音を立てた。
「さて、契約も半年と少しが過ぎたわけですが、最近はなにが不都合はありますか?」
向かいに座る一ノ瀬が、楓に向かって問いかけた。
月に一度彼とはこうして社外で秘密裏に面談をしている。大抵は、三葉家から近いこのカフェだった。
なにか不都合があれば、すぐに伝えるように言われている。
もちろん楓は彼の連絡先を知っていて、わざわざ会わなくてもなにかあればいつでも伝えられる環境にはある。
だが顔を見て声や表情を確認したいからと、彼は必ずこうやって会いにくる。
「特に問題ありません」
いつもの通りに、楓は答える。
楓の服装が変わったことへの社内での噂話は収まった。
式典での黒柳からの攻撃的な言葉については、話していいのか判断がつかなかった。
「問題ないという感じではありませんね」
一ノ瀬が呟いた。
「なにかあるなら早めに対処させていただく方がこちらとしてもいいのですが」
確かに彼が言う通り、問題ないわけではない。いや、むしろその逆で問題だらけだ。でもそれは、一ノ瀬に言うべき問題ではない。
「私の調査では、社内でのあなたの評判はここのところいいようです。服装が変わっただけでなく、どことなく柔らかい雰囲気になったと好評です。敵意を向けられることはなさそうですが……」
「それは……はい」
「それでもあなたがその表情だということは……原因は家の中にあるということでしょうか」
ドンピシャリの一ノ瀬の言葉に、楓はドキリとしてうつむいた。
今彼が言った通り楓の杞憂は、家の中、すなわち和樹自身にある。
「それは……」と呟き口を閉じると、彼はくすりと笑みを漏らした。
「つまり、ここのところ副社長がまた深夜帰宅を繰り返すようになったことと、やや精彩を欠く仕事ぶりの原因も、家の中にあるということですね」
通りに面したオープンカフェのテラス席で楓は、それをぼんやりと眺めている。
意味もなくアイスコーヒーをかき混ぜると、カランカランと氷が音を立てた。
「さて、契約も半年と少しが過ぎたわけですが、最近はなにが不都合はありますか?」
向かいに座る一ノ瀬が、楓に向かって問いかけた。
月に一度彼とはこうして社外で秘密裏に面談をしている。大抵は、三葉家から近いこのカフェだった。
なにか不都合があれば、すぐに伝えるように言われている。
もちろん楓は彼の連絡先を知っていて、わざわざ会わなくてもなにかあればいつでも伝えられる環境にはある。
だが顔を見て声や表情を確認したいからと、彼は必ずこうやって会いにくる。
「特に問題ありません」
いつもの通りに、楓は答える。
楓の服装が変わったことへの社内での噂話は収まった。
式典での黒柳からの攻撃的な言葉については、話していいのか判断がつかなかった。
「問題ないという感じではありませんね」
一ノ瀬が呟いた。
「なにかあるなら早めに対処させていただく方がこちらとしてもいいのですが」
確かに彼が言う通り、問題ないわけではない。いや、むしろその逆で問題だらけだ。でもそれは、一ノ瀬に言うべき問題ではない。
「私の調査では、社内でのあなたの評判はここのところいいようです。服装が変わっただけでなく、どことなく柔らかい雰囲気になったと好評です。敵意を向けられることはなさそうですが……」
「それは……はい」
「それでもあなたがその表情だということは……原因は家の中にあるということでしょうか」
ドンピシャリの一ノ瀬の言葉に、楓はドキリとしてうつむいた。
今彼が言った通り楓の杞憂は、家の中、すなわち和樹自身にある。
「それは……」と呟き口を閉じると、彼はくすりと笑みを漏らした。
「つまり、ここのところ副社長がまた深夜帰宅を繰り返すようになったことと、やや精彩を欠く仕事ぶりの原因も、家の中にあるということですね」