契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
仕事については不明だが、彼の帰宅が遅くなったのは、間違いなくあの夜の出来事が原因だろう。答えられずに黙り込む。

「ならば、私がお手伝いできることは少なそうですね。ですが、たとえば副社長からのセクハラ行為に悩んでいるということであれば、お力になりますが……」

「そ、そんなことはありません……! だ、大丈夫です」
 
慌てて楓は彼の言葉を遮った。
 
彼はまた笑みを浮かべ「そうですか」と言ってアイスコーヒーを飲んだ。
 
その彼を見つめながら、楓は少し考えてから口を開いた。

「あの、ひとつおかがいしてもよろしいでしょうか」
 
一ノ瀬がストローから口を離して頷いた。

「副社長が就任されてから半年以上経ちますが、その……評判というか、周りからの反応はどうなんですか?」
 
後継ぎとして周囲に認められ、三葉商船の代替わりをスムーズに成功せる。そして、会社をさらに飛躍させる。

彼はそのために楓と結婚した。

社員たちは、和樹のリーダーシップに魅了され、もはや次期社長は、彼以外考えられないという雰囲気だが、社外的なことは楓にはわからない

「非常に順調な滑り出しです」
 
一ノ瀬が言い切った。

「帰国されてからの副社長は、精力的に人と会い業務に取り組まれました。それが実を結んだ形でしょう。先日のパーティの各メディアの取り上げ方を見てもわかる通り、世界中に三葉商船の次期社長がやり手で会社の未来が明るいことを、十分にアピールできたと思います」

「そうですか」
 
改めて彼の凄さを耳にして、楓がため息をつくと、一ノ瀬がにっこりと微笑んだ。

「楓さんのおかげでしょう」

「え? そ、そんなことは……!」

「いえ、そういう一面は、確実にあります。副社長への縁談がしょっちゅう持ち込まれていたことはご存知ですね? 実はこれは大変な障害になっていました。どんなに敏腕社長でも娘、あるいは自分の紹介した縁談が断られるといい気はしませんから」
 
そう言って一ノ瀬はため息をついた。

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