契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
頭がパニックになりながらも楓は答えた。

「心配って……ただ仕事をしてただけです」

「仕事? それにしてもこんな時間まで……」
 
と言いかけて、彼は周囲を見回し楓以外にも社員がいることに今さら気がついて、そっと身体を離す。

どこか気が抜けたように呟いた。
「……今日は月末か」
 
経理課が月末は忙しくしていると思いあたったのだろう。
 
一方で見守っていたメンバーは微妙な空気だった。
皆、不自然なくらい無表情だ。
 
和樹が気を取り直したように、息を整えてから彼らに向かって口を開いた。

「遅くまで、お疲れさま。今月もありがとう」
 
副社長の顔に戻りそう言う彼に、皆「お疲れさまです」と答えているが、やっぱり不自然なくらい無表情だ。

なにかを堪えているようにも思える。
 
飯田が、緩む口元をごまかすようにごほんごほんと咳払いをした。

「ありがとうございます、副社長。今月も滞りなく月末を迎えられました。病み上がりの須之内さんに残業させてしまったのは申し訳なかったですが……」
 
するとその言葉に和樹が反応する。

「病み上がり⁉︎」
 
そしてぐるりと楓を振り返り険しい表情で肩を掴んだ。

「体調が悪いのか?」

「き、昨日は熱があったのでお休みさせていただきました」
 
予想外の剣幕に、慌てて楓はそのままを口にする。
 
それに和樹がまた声をあげる。

「熱⁉︎ 病院は? どうして出勤してるんだ!」

「す、すぐに下がりましたから……! もうまったく問題ありません」
 
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