契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
楓と和樹は、彼の運転する車で三葉家に帰ってきた。リビングで、センターテーブルに車の鍵を置く和樹の背中を、楓は複雑な思いで見つめている。
さっきの会社での彼の振る舞いは、いったいなんだったのだろう?
仮面夫婦ではないと社内に念押しするための演技だろうか?
だとしたら、ちょっと大袈裟にも思えるが効果的だった。
フロアには、経理課だけでなく他の課の社員の姿もあったから、噂はあっという間に回るだろう。
でも、もう契約はもう終了なのに……。
あたり前のように家へ来てしまったことも複雑だった。
今朝、家を出た時はもう二度とここへは来ないと思っていたというのに。
リビングの入口で立ち尽くす楓を和樹が振り返る。
「とりあえず、座って」
言われた通り楓が座ると彼はコーナーソファの反対側に腰を下ろした。
「メッセージ見たよ」
静かに言う彼に、楓はホッと息を吐いた。今までの彼の行動で、もしかしたらうまく伝わっていなかったのかもしれないと思っていたのだ。
「そうですか……」
「それは一昨日の夜、黒柳がここへ来たことと関係あるのか?」
思いがけない直球の質問に、楓は言葉に詰まった。
関係がないとは言えないが、答えると自分の彼への気持ちがバレてしまいそうで怖かった。
答えない楓に、和樹が鎮痛な表情になった。
「勝手なことをさせて申し訳なかった。本当は黒柳ではなく一ノ瀬が来るようにと指示をしたんだが。……ごめん。今日づけで彼女は秘書室から外した」
その言葉に楓は驚いて目を見開く。では、あの時の黒柳の言葉は嘘だったというわけだ。
「嫌な思いをしたんじゃないか?」
心配そうに言う彼に、楓の胸はギュッとなる。
契約は終了したのだからもう楓のことなど関係はないはずなのに、こうやって気遣ってくれる、彼の優しさがつらかった。
別れがなおさらつらくなってしまう。
一方で、黒柳が勝手に家に来たのだという事実にも衝撃を受けていた。
「だ、大丈夫です。でもそれなら……。どうしよう。黒柳さんに、私たちが別々に生活しているのがバレてしまいました」
まさか彼女がそこまでするとは思わなかった。知っていたら、なんとしても寝室への侵入は阻止したのに。
「私、その場にいたのに止められなくて……。ごめんなさい」
和樹が首を横に振った。
さっきの会社での彼の振る舞いは、いったいなんだったのだろう?
仮面夫婦ではないと社内に念押しするための演技だろうか?
だとしたら、ちょっと大袈裟にも思えるが効果的だった。
フロアには、経理課だけでなく他の課の社員の姿もあったから、噂はあっという間に回るだろう。
でも、もう契約はもう終了なのに……。
あたり前のように家へ来てしまったことも複雑だった。
今朝、家を出た時はもう二度とここへは来ないと思っていたというのに。
リビングの入口で立ち尽くす楓を和樹が振り返る。
「とりあえず、座って」
言われた通り楓が座ると彼はコーナーソファの反対側に腰を下ろした。
「メッセージ見たよ」
静かに言う彼に、楓はホッと息を吐いた。今までの彼の行動で、もしかしたらうまく伝わっていなかったのかもしれないと思っていたのだ。
「そうですか……」
「それは一昨日の夜、黒柳がここへ来たことと関係あるのか?」
思いがけない直球の質問に、楓は言葉に詰まった。
関係がないとは言えないが、答えると自分の彼への気持ちがバレてしまいそうで怖かった。
答えない楓に、和樹が鎮痛な表情になった。
「勝手なことをさせて申し訳なかった。本当は黒柳ではなく一ノ瀬が来るようにと指示をしたんだが。……ごめん。今日づけで彼女は秘書室から外した」
その言葉に楓は驚いて目を見開く。では、あの時の黒柳の言葉は嘘だったというわけだ。
「嫌な思いをしたんじゃないか?」
心配そうに言う彼に、楓の胸はギュッとなる。
契約は終了したのだからもう楓のことなど関係はないはずなのに、こうやって気遣ってくれる、彼の優しさがつらかった。
別れがなおさらつらくなってしまう。
一方で、黒柳が勝手に家に来たのだという事実にも衝撃を受けていた。
「だ、大丈夫です。でもそれなら……。どうしよう。黒柳さんに、私たちが別々に生活しているのがバレてしまいました」
まさか彼女がそこまでするとは思わなかった。知っていたら、なんとしても寝室への侵入は阻止したのに。
「私、その場にいたのに止められなくて……。ごめんなさい」
和樹が首を横に振った。