契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
一方で若い女性社員たちの反応は。

「新しい副社長! すっごくカッコよかったですね、楓さん! さすがロンドン帰り、話し方が優雅だった~!」
 
後輩の水谷亜美(みずたにあみ)が興奮して声をあげる。

仕事中にしては、はしゃぎすぎにも思えるが特に注目を集めているわけでもない。

あちらこちらで同じような声があがっているからだ。

「そ、そうだったね」

 楓はそう答えるのが精一杯だった。

「なんか意味もなくワクワクしちゃいます。これからは本社にいらっしゃるって話だし。まぁでも実際は、仕事でも関わることはないしお話しする機会もないんだろうけど。ね? 楓さん」

「そ、そうだね……」
 
まさかすでにBARで一緒にお酒を飲みましたとも言えずに楓は答えて席に座る。つられて隣の席に腰を下ろした亜美が、声を一段落とした。

「きっと今ごろ秘書室は、大騒ぎですよ」

「秘書室が?」

「そうです! 誰があの副社長の担当になるか?ってバチバチしてるんじゃないでしょうか。なんといっても名門三葉家の御曹司ですからね。独身だし、うまくいったら社長婦人になれるんです。もう『美の軍団』仕事どころじゃないですよ」
 
完全に面白がってそんなことを言っている。彼女はゴシップ好きなのだ。

いつも社内の情報をいち早く仕入れて、雑談代わりに楓にいろいろおしえてくれる。
 
秘書室は社内で密かに美の軍団と呼ばれている。その名の通り、美人が多いからである。
 
グローバル企業である三葉商船の秘書室は、役員のスケジュール管理をしていればいいというものではない。

上司に代わり海外の要人とやり取りする機会も多いため、社交性と外国語でのコミュニケーション能力は必須だし、ほかの課とは比べものにならないくらい身だしなみにも気をつけなくてはならないのだ。
 
関連会社の役員や、関係者息子と結婚する者もいたりして、社内ではいつもなにかと話題に上る課である。

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