契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「水谷さん」
亜美を呼ぶ声にふたりして立ち止まる。
あちらもふたり連れの男性社員だった。
首から下げている入管証には営業部とある。
「……あ、お疲れさまです」
少しテンションを落として亜美が答える。
「例の件、今月中になんとかならないかな」
男性社員が胸の前で拝むように手を合わせた。
亜美が眉間に皺を寄せた。
「ダメですよ。締切過ぎちゃっていましたから、来月の振り込みになります」
「そこをなんとか」
「ダメですって」
どうやら経費精算について無理を言われているようだ。
比較的事務手続きを軽視しがちで、どこか事務系の部署を下に見ている傾向にある営業社員とのやり取りでは時々こういうことがあった。
「締切過ぎたって言ってもたった一日じゃんか。水谷さんの力でなんとか……」
お願いと言いながら、しつこい。
見かねて、楓は口を挟んだ。
「なんともなりません。諦めてください」
すると彼はこちらを見て、はじめて楓がいることに気がついたのだ、という表情になる。
さすがに目には入っていただろうが、黒のタイトスカートに白いカットソー、紺色のカーディガンというどこからどう見ても地味な風貌の楓を、景色のように思っていたのだろう。
その楓が毅然として彼の言葉を遮ったことに驚いていた。
「締切は、守るためにあるのです。一日だろうが一カ月だろうが、遅れたら意味がありません。来月には精算しますからそれまでお待ちください」
きっぱりと言い切ると、彼は渋い表情になった。
眉を寄せて口を挟むなと言いたげだ。
明らかに不快感をあらわにしているが、楓は気にならなかった。
亜美を呼ぶ声にふたりして立ち止まる。
あちらもふたり連れの男性社員だった。
首から下げている入管証には営業部とある。
「……あ、お疲れさまです」
少しテンションを落として亜美が答える。
「例の件、今月中になんとかならないかな」
男性社員が胸の前で拝むように手を合わせた。
亜美が眉間に皺を寄せた。
「ダメですよ。締切過ぎちゃっていましたから、来月の振り込みになります」
「そこをなんとか」
「ダメですって」
どうやら経費精算について無理を言われているようだ。
比較的事務手続きを軽視しがちで、どこか事務系の部署を下に見ている傾向にある営業社員とのやり取りでは時々こういうことがあった。
「締切過ぎたって言ってもたった一日じゃんか。水谷さんの力でなんとか……」
お願いと言いながら、しつこい。
見かねて、楓は口を挟んだ。
「なんともなりません。諦めてください」
すると彼はこちらを見て、はじめて楓がいることに気がついたのだ、という表情になる。
さすがに目には入っていただろうが、黒のタイトスカートに白いカットソー、紺色のカーディガンというどこからどう見ても地味な風貌の楓を、景色のように思っていたのだろう。
その楓が毅然として彼の言葉を遮ったことに驚いていた。
「締切は、守るためにあるのです。一日だろうが一カ月だろうが、遅れたら意味がありません。来月には精算しますからそれまでお待ちください」
きっぱりと言い切ると、彼は渋い表情になった。
眉を寄せて口を挟むなと言いたげだ。
明らかに不快感をあらわにしているが、楓は気にならなかった。