契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「実際、経理課内ではそうですよね」
 
こういったことに悩まされることがある経理課のメンバーたちは『さすが、鉄の女ですね、楓さん!』と好意的な意味で声をかけられることも多かった。
 
トイレに寄るという亜美と別れて自席に戻りパソコンを開く。昼休みはまだもう少し時間があるが、午後の業務の確認をしておきたかった。

亜美じゃないけれど、新年早々残業はしたくない。
 
すると社内専用チャットに新着メッセージが届いていることに気がついた。

アイコンの名前を見てドキリとする。三葉和樹とあったからだ。
 
咄嗟に楓は席の周りを見回して、誰かに見られていないかと確認する。亜美はまだ帰ってきていないし、人もまばらだった。
 
ごくりと喉を鳴らして、メッセージを開く。

【本日の業務終了後、副社長室へ来てください】
 
その内容に、思わず楓はヒッと声をあげそうになってしまう。

心臓がドキドキと嫌な音を立てはじめる。BARで話をしたのが楓だとバレたのだ。

でなければ、雲の上の存在で、業務上かかわることなどない副社長に、呼び出される理由がない。
 
午前中、一心不乱にトラブル処理をする間に、楓はBARの男性が副社長だったというショックから、ほとんど立ち直っていた。すっかりなかったことになっていうのに、いったいどうして呼び出されたのだろう。
 
不安な思いでもう一度BARでの会話を思い出す。

どう考えてもわざわざ呼び出されるほどのやり取りをしたとは思えない。
それでも、無視するわけにはいかなかった。

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