契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
——そして午後六時半。
当初の目論み通り定時で仕事を終えた楓は、ひとり副社長室へ向かった。
会社のフロアマップで確認したところによると、副社長室は最上階の役員室の奥から二番目のようだった。
だが当然、直接行くわけにはいかず、秘書室を通さなくてはならない。
楓は憂うつな気分でエレベーターに乗り込んで最上階を目指す。
新しく就任したばかりの副社長に一社員がいったいなんの用なのだと思われるだろうことは明白だ。
最上階に着くと、そこは階下とはまったく違った世界が広がっていた。
真紅の絨毯が敷き詰められた廊下に、ずらりと並ぶ重厚な木の扉。
どうやらエレベーターを降りてすぐのところが秘書室のようだ。向こうからかすかに人の声がする。
「失礼します」
恐る恐るドアを開けると、中にいた秘書たちが静まり返った。
そのまま所属部署と名前、副社長から呼び出された旨を伝えると、美の軍団は皆眉を寄せ怪訝な表情でこちらに注目をする。
副社長に、この女が、なぜ呼び出されたのだろうと思っているのはあきらかだ。
「お伺いしております」
栗色の髪をふわりとカールさせたベージュのスーツを着た女性が立ち上がった。
「副社長の第二秘書をしております、黒柳(くろやなぎ)です。私が、ご案内いたします」
どこか険のある言い方でそう言って楓を廊下へ出るよう促した。
そしてそのまま楓の前を早足で歩いていく。
おそらく楓が社外からの来客だったらそんなことはないはずだ。歩調を合わせて、にこやかに案内するのだろう。
「こちらです」
彼女は、副社長室の前で立ち止まり扉をノックした。
「副社長、須之内さんが来られました」
中に入ると、中央のデスクで資料を読んでいた男性が顔を上げる。
楓の胸がドキリと鳴った。
当初の目論み通り定時で仕事を終えた楓は、ひとり副社長室へ向かった。
会社のフロアマップで確認したところによると、副社長室は最上階の役員室の奥から二番目のようだった。
だが当然、直接行くわけにはいかず、秘書室を通さなくてはならない。
楓は憂うつな気分でエレベーターに乗り込んで最上階を目指す。
新しく就任したばかりの副社長に一社員がいったいなんの用なのだと思われるだろうことは明白だ。
最上階に着くと、そこは階下とはまったく違った世界が広がっていた。
真紅の絨毯が敷き詰められた廊下に、ずらりと並ぶ重厚な木の扉。
どうやらエレベーターを降りてすぐのところが秘書室のようだ。向こうからかすかに人の声がする。
「失礼します」
恐る恐るドアを開けると、中にいた秘書たちが静まり返った。
そのまま所属部署と名前、副社長から呼び出された旨を伝えると、美の軍団は皆眉を寄せ怪訝な表情でこちらに注目をする。
副社長に、この女が、なぜ呼び出されたのだろうと思っているのはあきらかだ。
「お伺いしております」
栗色の髪をふわりとカールさせたベージュのスーツを着た女性が立ち上がった。
「副社長の第二秘書をしております、黒柳(くろやなぎ)です。私が、ご案内いたします」
どこか険のある言い方でそう言って楓を廊下へ出るよう促した。
そしてそのまま楓の前を早足で歩いていく。
おそらく楓が社外からの来客だったらそんなことはないはずだ。歩調を合わせて、にこやかに案内するのだろう。
「こちらです」
彼女は、副社長室の前で立ち止まり扉をノックした。
「副社長、須之内さんが来られました」
中に入ると、中央のデスクで資料を読んでいた男性が顔を上げる。
楓の胸がドキリと鳴った。