契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
そのくらいなんてことないと、楓は思う。それで、今の生活を守れるのなら……。
 
しかも奨学金の繰上げ返済のペースと、将来に向けての貯金のペースもあげられる。こんなに魅力的な契約はないように思えた。

「考えるまでもないんじゃないか?」
 
そう言って和樹が満足そうに微笑んだ。
 
楓がその気になりかけているのはお見通しなのだろう。
 
思わず「そうですね」と言ってしまいそうになって、彼の目を見てハッとする。
 
確かに、メリットのあるいい話だ。
でもだからこそ、なんだか少し怖かった。だってどう考えても話がうますぎる。
 
和樹は楓に決断を迫るように余裕の笑みを浮かべている。この彼の態度も気に入らなかった。

はじめの紳士的な顔とは違うこの彼の一面は、おそらくビジネス向けのものだろう。

商談の場で一筋縄ではいかない相手と渡り合う際に見せる顔だ。
 
ずらりとメリットだけを並べて楓の中から冷静な思考を奪い決断させようとしている。

一見親切なふりをして。
 
その手には乗るものかと思い楓は彼に向かって口を開いた。

「確かに、副社長がおっしゃる通りこの話を結婚ではなく契約だと捉えるなら私にとってはメリットのあるいい話です。ですがまだ決断はできません」
 
そう言って彼をジッと見つめる。目上の相手だと遠慮する気持ちを意識して考えないようにする。

契約をするならば、今は対等な関係だ。

和樹がわずかに頷いて話の続きを促した。

「さきほど副社長は私が信用できる相手だから契約を決めたとおっしゃいました。ですが私にとって副社長はまだそうではありませんから」
 
和樹が眉を寄せた。

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