契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
それが運ばれて来るのを待ちながら、楓はさりげなく和樹の腕から逃げだした。頬を膨らませて彼を睨む。
この場で文句を言うわけにはいかないが突然触れられたことに対する抗議だった。
いくら夫婦のフリだとしても気楽に触れないでほしかった。嫌だというわけではないけれど、とにかく胸がドキドキとして落ち着かない気持ちになる。
そんな状態で彼の妻を演じるなんて、楓にはとてもできそうにない。
でもその楓からの視線に、和樹が眉を上げただけだった。
"このくらいで、大袈裟だ"とその目は言っている。
「さぁ、奥さま、どうぞ」
もやもやとする気持ちのまま、スタッフに促されて、楓はフィッティングルームに入る。
渡された服に着替えて途方に暮れた。試着室のカーテンを開けて外に出る勇気が出ない。
試着室の中に鏡はなく、着替えた自分がいったいどういう姿なのか見当がつかなくて不安だからだ。
「奥さま? いかがですか?」
カーテンの向こうからのスタッフの呼びかけに、楓は慌てて答える。
「だ、大丈夫です。着られました」
でもやっぱり、カーテンを開けることはできなかった。
情けない、と楓は思う。
大きな会議の前だって、資格試験の当日だってこんなに緊張しないのに。
ただいつもと違うテイストの服を試着する。
それだけのことがこんなにもドキドキするなんて。
似合わないならそれだけの話じゃないかと、楓は自分に言い聞かせる。
そもそも誰になんと言われようと平気だというのが自分の強みのはずなのだ。
それなのになぜか今は、和樹がカーテンの向こうにいると思うだけで開けることができなかった。
どうしてかはわからないけれど、彼に変だと思われるのが怖い。
さっきまで確かにあったはずのやる気がしおしおと萎んでしまう。
ダメだ、やっぱりできない、もとの服に着替えよう、楓がそう思った時。
シャッと音を立てて、カーテンが開く。
「ひゃっ!」と、声をあげて振り返ると、和樹が立っている。
この場で文句を言うわけにはいかないが突然触れられたことに対する抗議だった。
いくら夫婦のフリだとしても気楽に触れないでほしかった。嫌だというわけではないけれど、とにかく胸がドキドキとして落ち着かない気持ちになる。
そんな状態で彼の妻を演じるなんて、楓にはとてもできそうにない。
でもその楓からの視線に、和樹が眉を上げただけだった。
"このくらいで、大袈裟だ"とその目は言っている。
「さぁ、奥さま、どうぞ」
もやもやとする気持ちのまま、スタッフに促されて、楓はフィッティングルームに入る。
渡された服に着替えて途方に暮れた。試着室のカーテンを開けて外に出る勇気が出ない。
試着室の中に鏡はなく、着替えた自分がいったいどういう姿なのか見当がつかなくて不安だからだ。
「奥さま? いかがですか?」
カーテンの向こうからのスタッフの呼びかけに、楓は慌てて答える。
「だ、大丈夫です。着られました」
でもやっぱり、カーテンを開けることはできなかった。
情けない、と楓は思う。
大きな会議の前だって、資格試験の当日だってこんなに緊張しないのに。
ただいつもと違うテイストの服を試着する。
それだけのことがこんなにもドキドキするなんて。
似合わないならそれだけの話じゃないかと、楓は自分に言い聞かせる。
そもそも誰になんと言われようと平気だというのが自分の強みのはずなのだ。
それなのになぜか今は、和樹がカーテンの向こうにいると思うだけで開けることができなかった。
どうしてかはわからないけれど、彼に変だと思われるのが怖い。
さっきまで確かにあったはずのやる気がしおしおと萎んでしまう。
ダメだ、やっぱりできない、もとの服に着替えよう、楓がそう思った時。
シャッと音を立てて、カーテンが開く。
「ひゃっ!」と、声をあげて振り返ると、和樹が立っている。