契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「可愛い……」
 
思わず楓は呟いた。
 
そもそもクローバー自体が、楓にとっては特別なデザインだ。

言うまでもなく三葉商船を彷彿とさせるからだ。
 
勤務先に愛着を感じるなんておかしいと自分でも思う。

でも、実家には絶対に帰りたくない楓にとっては、安心の象徴のようなものなのだ。

三葉商船に入社してはじめて、楓はひとりで生きていけるという安心感を得られたのだ。
 
ちょっとした小物を選ぶ時、つい手が伸びるのはクローバーのデザインのものだった。

「三つ葉は珍しいですね」
 
楓が言うとスタッフが頷いた。

「四つ葉が多いですからね。幸運の象徴ですから」

「そうですね。でも三つ葉の花言葉も素敵だから、もっとあってもいいんだけど。愛情、信頼……」
 
その楓の言葉に、スタッフが「まぁ」と言う。そして満面の笑みを浮かべた。

「ええ、ええ、そうです! 三つ葉の方が素敵です。このネックレスは奥さまのためにあるようなネックレスですわ。なんと言っても、旦那さまからのプレゼントですもの。こちらのデザイン、ピンクゴールドとイエローゴールドもございのよ。お待ちください。ただいまお持ちいたします」
 
そう言って彼女はいそいそと離れていく。
 
意外な彼女の反応に、楓は目をパチパチさせた。
 
そして彼女は楓が和樹に対する愛情を口にしたと思ったのだと気がついた。

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