契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
一ノ瀬の言葉に、今度は和樹がフリーズする。まったく意味がわからなかった。
 
一ノ瀬がくすりと笑みを漏らした。

「帰国してからの副社長は、まったく休みを取られていません。ゴルフも帰国前に行かれたきりです。ですからさすがに最近はややお疲れの様子でしたが」
 
今彼が言った通り、副社長に就任してからの和樹は働き詰めだ。
 
本来は体調管理も仕事のうちと、以前の和樹は意識して休みを取るようにしていた。

実際、リフレッシュすると次の週の業務はうまくいくことが多かった。
 
だが帰国してからはそれがまったくできていない。

休暇が必要なのは確かだが、今はとにかく業務に集中したいからだ。

そしてそれに疲れを感じてはいたのは確かだった。
 
——でも今週はどこかスッキリとした気分で仕事に取り組めている……。

「そのように楽しそうな副社長を見るのは久しぶりです。よい週末をお過ごしになられたようですね。それでは報告は以上ですので失礼いたします」
 
意味深ににっこりと笑って、一ノ瀬は部屋を出ていった。
 
パタンと閉まるドアを見つめて和樹は椅子に背を預ける。両手を膝の上で組んで考えた。

『よい週末』
 
楓との買い物は、仕事のようなもので、目的はリフレッシュではない。

だが一ノ瀬の指摘を見当違いだと断言できない自分がいるのも確かだった。

今彼が言ったように、さっきのようにただ笑うことすら随分と久しぶりのような気がするくらいなのだから。
 
さっき和樹は、契約を継続の理由を彼女のポテンシャルに気がついたからだと考えた。もちろん、それもあるだろうが……。
 
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