契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
経理課のメンバーの反応は概ね良好で、とくに三つ葉のクローバーのネックレスに関しては誰に言ったわけではないが、和樹からのプレゼントだと認識されているようだ。

夫婦仲がよいことをアピールできているといえるだろう。
 
それでも、ほかの社員たちにどう思われているかわからなくて不安だった。
 
遠巻きに見られてヒソヒソ言われるという慣れているはずの状況が、どうしても気になってしまう。

こんなことははじめてだった。
 
……三葉和樹の妻として、相応しい女性になれているのだろうか。
 
着飾ることで却って彼の評判を落としてはいないだろうか。

それが気になって仕方がない。
 
ため息をついて水を飲む。

その楓のネックレスに視線を送り亜美が、ニヤニヤとした。

「半年じゃ、まだ新婚ですもんね。そもそも出会ってからもそんなに経ってないんだし。まだまだ楽しい時期ですよね。うらやましい」
 
楓と和樹の馴れ初めは、和樹が帰国してすぐにBARでたまたま一緒になり意気投合したという真実を半分織り交ぜたものになっている。

「私なんか、もうその気持ちなくなっちゃったな……」

 亜美が、ため息をついて肩を落とした。

「亜美ちゃん、彼とうまくいってないの?」
 
彼女は、よく楓に彼氏の話をする。

確かつい最近も、ふたりして海外ドラマにハマっているとか言っていたのに。

「うまくいってないわけじゃないですけど、付き合ってもう二年ですからね。もうあんまりドキドキはしないかな。キュンキュンもしないし……」

「そうなんだ」
 
楓が相槌を打つと、彼女はランチのサラダを箸で突いてつまらなそうにした。

「デートも、お家でまったりっていうのばっかりなんです。どっか行こうよって言っても『俺はこういうのが好きなんだ』とか言って。……きっと彼の方も私にドキドキしなくなったんですよ」

「ドキドキしなくなった……」
 
その言葉を反芻して、楓はふと思い立って彼女に向かって問いかけた。

「ねえ、亜美ちゃん。亜美ちゃんは彼氏のこと、どうして好きだと思ったの?」
 
亜美が驚いたように目をパチパチさせた。
 
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