契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
恐る恐る楓は尋ねる。
エトワールは、食べたことはないけれど、いつかは行ってみたいと思っていた憧れの店だ。
 
和樹がややぶっきらぼうに答えた。

「俺は甘い物は食べないから、君が食べないと無駄になる」

「ありがとうございます」
 
突然降って湧いた幸運に、楓は嬉しくなってさっそく紙袋を開けてみる。

中には小さめのケーキが四つも並んでいた。ガトーショコラ、フルーツタルト、ラズベリーパイ、レアチーズ……。
 
普段は絶対に手が出ない高級洋菓子店のケーキに、楓は目を輝かせた。

「わぁ、美味しそう! これ本当に全部私が食べていいんですか?」
 
声をあげて和樹を見る。
 
すると意外なことに、和樹は目を細めて微笑んでいた。その笑顔に楓の胸がとくんと鳴る。
優しげな眼差しに、楓の脳裏にアフタヌーンティーの時の彼が浮かんだ。
 
青い海に浮かぶ船を見つめていた、愛おしむようなあの視線……。
 
なんだか変な勘違いしてしまいそうで、楓は慌ててケーキに視線を戻した。

「でも、四つもなんて。いくら妻へのお土産だとしても多くないですか?」
 
高鳴る鼓動を落ち着けようと、楓はとりあえず思いついたことを口にする。
 
すると和樹は、少し照れたように楓から目を逸らした。

「君の好みがよくわからなかったからだ。アフタヌーンティーの時は、どれもこれも全部美味しそうに食べてたじゃないか。だから……」
 
意外な答えだった。

ただのカモフラージュなら、楓の好みなど、関係ない。

「……私の好みを考えて、選んでくれたんですか?」
 
思わず楓が尋ねると、彼は楓から目を逸らした。

「どうせなら、残さずに食べる方がいいからだ。じゃあ俺はこれで」
 
少し早口でそう言って、キッチンを出て行った。
 
残さずに食べる方がいいと言いながら、四つも買ってきたという、有能な彼らしくない行動に、残された楓の胸にむずがゆいような温かな思いが広がる。
 
もちろんこのケーキだって、一週間前に買ってもらった高級ブランドの洋服やバッグ、靴とアクセサリーと意味合いは同じだ。

夫婦のフリをするための小道具にすぎない。

……でもなぜか、どうしてかはわからないけれど、目の前の種類の違う四つのケーキがとても嬉しかった。

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