エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

「麻人くんの気持ちはなんとなくわかっていたけど……胡桃ちゃんの父親が会いに来たっていうのは本当なの? 私たち、廊下で聞いていてびっくりしちゃった」

 麻人さんが帰ったあと、叔父と叔母にも状況を説明することになった。

 心配をかけたくなくて黙っていたけれど、こうなったら隠しておけない。

「はい。前に叔父さん、故障した車を助けたって言ってましたよね。その車に乗っていた社長さんが、胡桃の父親です。この家でお茶をご馳走になったと言っていたので……」
「えっ。ってことは俺、また余計な事しちゃったのかな……?」
「いえ、叔父さんのせいじゃありません。私が未練がましく、彼との思い出が詰まったあのキッチンを取っておいたせいです。それを見て、彼は私がここにいるって確信したみたいで」

 今日の役目を終え、また明日の出番を待って居間の片隅で静かに眠っているままごとキッチンを眺め、苦笑する。

 あのキッチンは、胡桃が遊ぶだろうと思って大事に保管していたというより、私自身がどうしても捨てられず、それを胡桃が気に入ったというだけなのだ。

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