エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

 私が受け取るのをキラキラした目で待っている三つ編みの少女は、なにを隠そう私の娘、胡桃(くるみ)。三年半前、瑛貴さんとの間にできた子だった。

 ままごとが大好きの二歳八カ月で、この頃はずいぶん会話が上手になった。

「わぁ、美味しそう! いただきまーす」
「ママの、からくちよ」
「そうなの? ホントだ! 辛~い」

 舌を出して泣き顔を作ると、胡桃が「あははっ」と大笑いする。胡桃は私のオーバーリアクションが大好きでいつも笑ってくれるので、日に日に私の演技も派手で大げさになっていく。まるでリアクション芸人だ。

 なにより大切な宝物である胡桃を授かったのは、瑛貴さんと過ごしたあの情熱的な一夜。

 フィンランドから帰国し、彼への気持ちを断ち切ろうともがいていた間に妊娠が発覚した。

 産むならシングルマザーになるしかないとわかっていたけれど、不安よりも新しい家族が増えるという喜びの方が圧倒的に勝っていたので、産む決断をした。

 とはいえ、妊娠してしまったがために、求職活動は中断。仕事がないのに東京で高い家賃を払い続けるのも分不相応だと判断し、思い切って静岡の叔父と叔母に相談した。

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