エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

 ふたりとも当然驚いたけれど、私を責めたりはしなかった。

『だったら家においで。みんなで子育てしよう』

 そう言ってくれた叔母さんはもちろん、叔父さんも快く妊婦の私を迎え入れてくれた。

 出産もこちらの病院で行い、生まれたばかりの胡桃を目にした叔父さんと叔母さんは、まるで孫が産まれたかのように喜んでくれた。

 それからずっと、ふたりの優しさと温かさに、私も胡桃も助けてもらっている。

 胡桃の父親について彼らはとくに詮索しないが、胡桃にだけは一応、パパの存在についてふわっと伝えてある。

『パパは遠くでお仕事してるから会えないけど、胡桃が寂しくないようにこのキッチンを買ってくれたんだよ』

〝このキッチン〟――とは、フィンランドで瑛貴さんが購入した、あのトナカイマークのキッチンだ。

 帰国してすぐに私の自宅に届き、どういうつもりなのかと訝しく思ったが、手切れ金のようなものかもしれないと理解した。

 瑛貴さんを忘れるためには捨てた方がよかったのかもしれない。けれど、結局私は彼を憎みきれず、家具に罪はないのだからと自分に言い聞かせて、大切にこの家に持ってきた。

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