敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「どうして七緒が聖さんと一緒にいるの」
そのひと言がすべてだった。――七緒のお見合い相手は彼だったのだ。
「聖、これはいったい……?」
手前の椅子に座っていた彼の祖父は振り返り、激しいまばたきをしながら聖と七緒を交互に見やる。
孝枝と同年代だろうか、白髪交じりの髪をオールバックにし、ダンディな雰囲気を醸し出しながら威厳まである。
〝キミもお見合いだったのか?〟
七緒に向けられた聖の目がそう言っていた。
彼も自分の置かれた状況を理解しただろう。自分のお見合い相手が七緒であると。
その可能性をどうして考えなかった自分が、今さらながら情けない。ホテルならともかく、クルーズ船でお見合いなんてそうそうないだろう。
隣で同様に困惑していた聖が七緒の手をぎゅっと握る。なにかの合図なのか、それとも第二の危機的場面に突入した武者震いのようなものなのか。
その仕草につられて彼を見上げると、聖は気を持ちなおしてゆっくり口を開いた。