敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「俺も驚いた。まさかお見合い相手が七緒さんだとは……。偶然にも彼女が乗船していたから、紹介してお見合いはできないと伝えに来たところだったんだ」
とっさに違和感なく説明できる頭の切り替えの速さに驚く。七緒だったらシナリオをすんなり書き換えられないだろう。
陸から離れた場所にいきなり湧いて出たように恋人が現れるよりは、偶然同じお見合いで鉢合わせしたほうが信ぴょう性はある。ある意味いい方向に話が転がった。
「ね? 七緒さん」
ゆったりと首を傾け、聖が七緒に同意を求める。優しい微笑みは、まさに恋人に対するもの。名演技だ。
「は、はい、そうなんです。私も驚いてしまって……。聖さんがこの部屋のドアを開けるから、まさかと思ったのですが」
七緒が聖に合わせて答えると、孝枝が目を丸くしたまま口を開く。
「でも七緒、恋人がいるなんてひと言も」
「そ、それは……別れたばかりだし、おばあちゃんに心配をかけちゃうかと思って」