敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
もう恋なんてしない、結婚も一生しなくていいと宣言していたから、新しい恋人がいるとは思いもしないだろう。
「いやはや、お見合いさせようとしたふたりがすでに恋人だとは。孝枝さん、こんなにうれしい話があるか?」
「ええ、本当に」
聖の祖父の言葉に孝枝がしみじみ頷く。ふたりはやけに親しげだが、どんな関係なのだろうか。
自分の置かれた驚くべき状況と疑問が頭の中で渦巻く。
「ともかくふたりとも座ったらどう?」
孝枝に言われるまま、七緒と聖は向かい合って腰を下ろした。
当初は恋人がいるからお見合いはできないと伝え、この部屋を立ち去る予定だった。その後、七緒の祖母にも同じようにして強制お見合いから逃れ、ふたりとも意に反する状況を打破して終了だと。
ところが事態は急転し、お見合いならぬ〝恋人をお互いの家族に紹介する場〟と化し、聖と相談もできないままここに居座らなければならなくなった。
名前と年齢しか知らない相手とどう話を紡いでいったらいいのか、平静を装いつつ七緒は内心ひどく焦っていた。