敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「いえ、大丈夫です」
彼の隣に座りつつ首を横に振る。
いい香りにつられたが、この後に控えている予定を考えるとゆっくりする気分でもない。
「そんなに暗い顔するなよ。俺が一緒に行くんだから心強いだろ?」
「暗い顔してましたか?」
「この世の終わりみたいな」
「今ここで世界が終わったら、私の人生、負けたままになるので困ります」
せめて唯斗と恵麻に、へっちゃらな自分を見せつけてからにしたい。
「ならそんな顔しないで笑っていたほうがいい。知ってるか? 笑顔は脳に〝幸せだ〟って誤作動を起こさせるらしいぞ」
「そうなんですか?」
「口角が上がったときにドーパミンが働くらしい。なんだか楽しいぞって」
たかだが笑顔なのにとバカにするものではないみたいだ。