敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
好きになるのは自由かもしれないが、それを略奪の形で行動に移していいとは思わない。
ここに集まった人たちのどれだけが、ふたりの婚約の経緯を知っているのだろう。少なくとも今、向けられている視線のほとんどが七緒への憐れみでないのはたしか。
グランビューレで向けられていた同情的な目はかえって悔しかったため、違った風向きになったのがうれしい。
「なるほど。好きになったらモラルもなにも関係ないわけですね。それはあまりにも自分本位だ。でもよく覚えておいたほうがいい。誰かを傷つけて成就する恋愛は、巡り巡って自分に不幸を招く。あなたの気持ちに応えた彼は、将来同じようにべつの女性に乗り換える可能性があるわけですから」
「そんなことないものっ」
かわいらしい顔立ちはどこへやら、恵麻の顔が醜く変わっていく。
「ともかくキミたちにはひと言お礼を言いたいと思っていましたから、こうしてお会いできてうれしいですよ」
興奮気味に声を荒げた恵麻と対照的に、聖は変わらず紳士的な態度を崩さない。それでも言葉には嫌悪感が滲んでいた。