敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「ひとつだけ言っておきたいことがあるんです」
まばたきで頷いた聖に先を続ける。
「私、こういう経験がなくて」
「……え?」
まさか、嘘だろ。聖の戸惑いが手に取るようにわかる。
彼氏がいれば経験があって当然と思っていただろう。むしろ突き詰めて考えもしなかったかもしれない。
「彼とはその……キス止まりだったんです」
呆気にとられていた聖の目がにわかに三日月のようになる。
「なんだそのうれしいサプライズは」
「うれしい、ですか?」
彼氏と呼べる存在があったにもかかわらず、二十六歳にもなって男性経験がないなんて七緒は恥ずかしさでいっぱいだ。聖にこんな暴露をする羽目になるなんて想像もしていなかった。